⚠️ 量子力学は学問として論理的に構築されている物理の一分野です。一方で、人間の意識(スピリチュアル的な部分)を説明することはできません。
量子力学はどのような学問なのか
物理の記事 でも説明したように、物理は、自然界の現象をできるだけ単純な法則・数式で説明するためのものです。

物理とは何なのか?
そもそも、物理学とは何なのでしょうか?物理を学ぶ際には必ず知っていてほしい、物理学の基本的な考え方と実用例について解説します。
量子力学はその中でも、とても小さい物体の現象 を説明するための理論になります。特に、原子や分子、電子や光子などの微小な粒子の振る舞いについて考えます。
1800年代、力学 と 電磁気学 はほとんど完成され、日常的なスケールの現象はほとんど説明ができるようになっており、物理は完成したとすら思われていたようです。
しかし、1900年前後になると、観測技術の向上により、「黒体輻射」や「光電効果」 など、従来の力学や電磁気学では説明が難しい現象が発見されました。
(「黒体輻射」や「光電効果」の詳細は割愛します。興味があれば調べてみてください。)
そこで、物理学者がそのような現象を説明するための理論として、新たに作られたのが 量子力学 です。
量子力学では、微小な粒子( 量子 と呼ばれます)の振る舞いが、日常にある物体の振る舞いと大きく異なる ことを明らかにすることで、 それらの現象を説明することを可能にしました。
では、微小な粒子の振る舞いとはどのようなものなのでしょうか。量子力学の特徴について見ていきましょう。
- 注意:量子力学は日常にある物体の運動も説明することができます。ただ、日常のスケールの運動では、"量子的な効果" がほとんど現れないために、 従来の力学(古典力学)で説明することが可能です。つまり、(古典)力学は、量子力学の近似と言えます。 しかし、わざわざ難しい理論で日常の運動を説明する必要はないので、今でも(古典)力学は多くの所で使われています。
力学の概要については、以下も参照してください。

運動方程式の気持ち【力学】
運動方程式とは何なのか?何のためにあるのか?運動方程式の本質をわかりやすく解説します。
量子力学の特徴
ずばり、量子力学の特徴は、「波動性」 と 「粒子性」 です。
「電子は波である」 とか 「光は粒子であり波でもある」 とか言われることも、この性質に基づいています。
もちろん、その表現は間違いではないのですが、特に初学者にとっては誤解を招きやすいので、別の言い方をしてみましょう。
そもそも、力学で前提にしていることは何でしょうか?意識したことはないかもしれませんが、 物体の 「位置」 と 「速度」 が確定していることを前提にしていました。
これは日常的な感覚でも当たり前で、例え正確に測定できなくとも、物体はある特定の速度を持って、ある特定の 1 点に存在している と考えますよね。
しかし、量子力学はそのことを前提としません。そしてむしろ、「位置」と「速度」が同時に確定していることはない と考えて論理を展開しています。
これは 不確定性原理 として知られており、現在では広く認められている考え方です。 そしてこの「量子は 1 点に固定された粒ではなく、広がった存在として振る舞う」ことを、「波動性」 という言葉で表現しています。
「はぁ?」と思われるかもしれませんが、これが、量子力学における基本的な考え方となっています。 かのアインシュタインですら、「そんなわけはないやろ」と言っていた程なので、直感的に理解するのは難しいかもしれません。 というかそもそも、この世界が人間の思考で完璧に理解できるほど単純な仕組みだと思っていること自体が間違いなのかもしれませんね。
しかし、そのようなことさえ受け入れれば、実験事実と矛盾せず論理的に理論を展開することができるため、これを出発点として量子力学は構築されています。
- ちなみに、力学では「時間」が観測者によらず共通であることも前提としています。しかし、それを疑い、違う前提から出発して構築されたのが、相対性理論 です。
量子の扱い方
力学では、「位置」を や などと表して、これを運動方程式で表現していました。しかし、量子力学ではこのようなことは不可能です。
その代わりとして、量子力学では、波動関数 というものを導入します。 波動関数 は、直感的には 量子の性質を表す数式 と考えれば良いでしょう。
波動関数を用いることで、量子がどこら辺に存在するかや、どれくらいの速度を持っているか、などを計算できるようになります。
そして、波動関数の計算には、運動方程式の代わりに、シュレディンガー方程式 というものが使われています。
波動関数の詳細な説明は長くなるため、また別の記事で解説しますが、 量子力学では、量子の振る舞いは波動関数によって記述され、シュレーディンガー方程式によってその変化を計算する というのを抑えておくと良いでしょう。
量子力学の実用例
最後に、量子力学の応用例を紹介します。
原子や分子、電子や光子などの微小な粒子の振る舞いを説明する、というので、日常に関係ない技術のように思われるかもしれませんが、 現代の技術の多くは、量子力学の理論に基づいています。
具体的な例をいくつかあげてみました。
例
- 半導体:スマホやパソコンなど、現代の電子機器のほとんどは半導体でできているといっても過言ではありません。 そして、半導体を設計するにあたっては電子の振る舞いを詳しく理解する必要があり、量子力学が不可欠です。
- 光デバイス:光の振る舞いを理解するには、量子力学が不可欠です。例えば、LED や レーザー なども、量子力学の理論に基づいています。
- MRI:MRI は、原子核の スピン を利用して体内の画像を撮影する技術です。病院で検査に使うものですね。 スピン は、量子力学で重要となる概念の一つです。
- 量子コンピュータ:量子コンピュータは、量子ビット という量子の性質を利用したコンピュータです。 今のコンピュータではできない計算を行えることが理論的にわかっており、実用化が進められています。
いかがでしょうか。量子力学は、日常とはあまり関係ない神秘的な学問と思われがちですが、スマホやコンピュータの実現をはじめとして、 現代の生活の基盤となる理論 の一つとなっています。