さわってわかる電子雲【3Dモデル電子雲】
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この記事を書いたきっかけ
学部生時代、ついに量子力学の講義が始まり、高校化学でよく見た電子雲を導出できるとワクワクしていたところ、実際にシュレディンガー方程式を解いて出てくるのは 球面調和関数 を含んだ 複素関数 でした。
しかし、それまで持っていた水素原子の電子雲のイメージは、赤と青で塗り分けられた「ダンベル型のp軌道」や「四つ葉型のd軌道」といったものでした。 複素関数のままでは単純に値の正負で塗り分けたりできないので、教科書の図とは 何かが違うはず 、ともやもやしていました。
それが 「基底の違い」 であり、複素関数表示の軌道の足し引きで教科書の図を作ることができる(詳細後述)と分かった後も、いまいち腑に落ちませんでした。 教科書やWebサイトに掲載されている電子雲の可視化は 静止画ばかり で、ひとつの角度から見た図や、特定の断面だけを切り取った図では、 電子雲の立体的な構造が掴めず 軌道の足し引きのイメージが湧かなかったのです。
もし電子雲を色んな角度から眺めることができたらなあ、という思いをもとにこの記事を書いてみました。
複素関数基底:シュレディンガー方程式の素直な解
水素原子の波動関数は、量子力学の基本的な問題として頻出で、大抵はシュレディンガー方程式を極座標で解き、得られる波動関数は次の形で表されます。
は原子核からの距離 に依存する動径関数、 は角度に依存する球面調和関数です。
ここで重要なのは、磁気量子数 が でないとき、 は複素関数になるということです。 具体的には という因子が含まれていて、z軸周りの角度 が変わると位相が変化していきます。
つまり、シュレディンガー方程式を素直に解くと、複素数値を持つ波動関数が得られます。 上のビューアで「複素関数基底」を選ぶと、この本来の形を見ることができます。色相が複素位相を表していて、z軸周りを回ると色が変化していく様子が確認できるはずです。
実関数基底:化学でよく使われる形
では、教科書でよく見る「ダンベル型のp軌道」はどこから来たのでしょうか。
答えは、 と を組み合わせることで実関数が作れる、という数学的な性質にあります。
この関係を利用すると、例えばp軌道では
のように、, , 軸方向に伸びた実関数の軌道を構成できます。
物理的に解釈すると、 と はz軸周りの回転方向が逆になっているだけです。 右回りと左回りを重ね合わせると回転成分がキャンセルされ、「静的な形状」だけが残ります。それが実関数基底で見える形です。
化学では、この実関数基底のほうがよく使われます。「軌道がどの方向に伸びているか」が直感的にわかりますし、 分子軌道を考える際には波動関数の符号(正負)が結合性・反結合性を判断する手がかりになるためです。
両方とも正しい解
ここで注意しておきたいのは、複素関数基底も実関数基底も、どちらも数学的に正しい解だということです。
複素関数基底 は、シュレディンガー方程式を素直に解くと出てくる形で、角運動量演算子 の固有状態になっています。 磁場中での電子の振る舞いなど、量子数 の物理的意味が重要になる場面ではこちらの形が必要です。
実関数基底 は、複素関数基底を線形結合して作られた形で、 の固有状態ではなくなりますが、 空間的な広がりが視覚的にわかりやすくなります。化学結合を考える場面ではこちらの形が便利です。
このビューアでは両方を切り替えられるので、同じ電子雲を異なる視点から眺めてみてください。
操作方法
- 左ドラッグ:回転
- 右ドラッグ:平行移動
- ホイール:拡大・縮小
- 左上のボタン:パネルの開閉
主量子数 を大きくすると、軌道が広がり節面の数が増えていきます。 以上の軌道で、内部に節面があるのを確認してみてください。 回転させながら見ると、静止画ではわかりにくかった立体構造が見えてくるはずです。
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