運動方程式の気持ち【力学】

2025/2/10
2025/2/10

運動方程式は何のためにあるのか

物理の記事 でも説明したように、物理は、自然界の現象をできるだけ単純な法則・数式で説明するためのものです。

thumbnail

物理とは何なのか?

そもそも、物理学とは何なのでしょうか?物理を学ぶ際には必ず知っていてほしい、物理学の基本的な考え方と実用例について解説します。

運動方程式はその中でも、身の回りにある物体の運動を説明するために作られた方程式になります。

そして、運動方程式を用いて説明される理論は、力学 というふうに呼ばれます。 力学は、運動方程式といくつかの基本的な定義を基に構築された物理の一分野です。

運動方程式は、物理の中でも最も単純な数式ではありますが、これだけで ほとんどの物体の運動を説明することが可能です。

ボールを投げた時のボールの動きはもちろんのこと、人の動きやロボットの動き、さらにはロケットの動きまで、ほとんどの物体の動きを運動方程式一本で説明できます。

ただし、運動方程式だけでは説明できない運動もあります。それは、とても小さい物体の運動 と、とても速い物体の運動 です。 それぞれ、量子力学相対性理論 が代わりに使われます。

しかし、日常ではそのような状況を考えることはほとんどありません。

運動方程式は、ほとんどの物体の運動を説明できる、非常に強力でものすごく応用範囲が広い、この世界の支配者の1人とも言えるでしょう。


運動方程式の中身

ここからは数式も用いますが、数式がわからなくてもついていけるような説明にとどめています。

ずばり、運動方程式は以下のようになります。

運動方程式

質点の加速度 a\bm{a} は,質点に作用する力 F\bm{F} に比例し,質点の質量 mm に反比例する

ma=Fm\bm{a} = \bm{F}

色々聞き慣れない用語があるかもしれません。

まず、質点 は、物体 と置き換えちゃって構いません。物体についての式だと考えましょう。

次に、加速度は、速度の変化を表すものなのですが、ここでは、物体の移動を説明するもの、というくらいに、ざっくり捉えましょう。

最後に、 は、物体の運動を変える原因 となるものです。ただ、日常の感覚の「力」で問題ありません。物体にかかる影響と思えば大丈夫です。

つまり、運動方程式を大胆にわかりやすく言い換えると、次のようになります。

物体について、周りの環境の影響がどうその物体の移動に反映されるかを表した式

そして、さらに詳細に言い換えると、運動方程式は、

物体の初期状態(どこにあるのか、速度はどれだけか)と、周りの状況(すなわち、物体にかかる力)さえわかれば、次に物体がどう動くかを説明できる式

とも言うことができます。

少し例を考えてみましょう。例えば、飛行機から物体を落とすことにします。

この時、知りたいのは次の二つです。

  • 物体の初期状態:物体を落とす瞬間の物体の位置と速度
  • 周りの状況:重力(加速度)の大きさや空気の状態

逆に、この二つさえわかれば、ここから物体がどのような運動をするのかを、運動方程式だけを使って、厳密に予測することが可能です。
例えば、物体がどこに落ちるかも予測することができます。

つまり、完璧に物体の初期状態と周りの状況を理解できれば、運動方程式だけを使って、物体の将来を完璧に予測できる というわけですね。

しかしもちろん、物体やその周りの状況を完璧に測定することは人間には不可能です。そこにある全ての要素の状態を知る必要があるからです。
もしできれば、天気予報すら完璧に当たるものになってしまいます。

この例でわかるように、運動方程式は、現在の状態から物体の今後の運動を説明できる強力な方程式になっています。


運動方程式の展開

ここまで、運動方程式が何なのかについて説明してきました。

最後に、物理学として、運動方程式の先にどのように広がりがあるのかについて説明したいと思います。

まず、物体の運動について、先にも述べたように、「とても小さい物体の運動」と「とても速い物体の運動」 は説明できません。

それぞれ、「とても小さい物体の運動」 については、1900年代に 量子力学 が作られ、今では電子や光子といった極微小な運動を説明することが可能です。

そして、「とても速い物体の運動」 については、同じく1900年代に、アインシュタインによってかの有名な 相対性理論 が作られ、光速に近い速さで動くような物体まで、その運動を説明することが可能になりました。

また、その過程で、物体は光速を超えないという法則も明らかになっています。
(この法則は、実は運動方程式には反しています。運動方程式も完全無欠な方程式ではないというわけです。)

また、一口に物体の運動と言っても、実際は様々な状況があり、その状況に応じて、力学をより使いやすい形にした様々な理論が作られてきています。

例えば、以下のようなものがあり、応用範囲は多岐に渡ります。

  • 流体力学:空気や水といった、気体や液体の運動を説明する理論
  • 材料力学:固体物質の運動(どちらかというと、変形や破壊)を説明する理論
  • 構造力学:建物や橋、ダム、航空機の翼などの構造物にかかる力や変形、強度を分析する理論
  • 機械力学:機械やロボット、エンジンなどの運動や振動を解析し、効率的で安全な設計をするための理論

このように、力学は様々な物理分野にもつながる、物理学の基盤になっている重要な分野 です。

数学的なハードルも他の分野に比べて低めなので、もし、物理を学んでみようと思っている方がいれば、まずは力学から学ぶことをおすすめします。