【日常の数学】鳩の巣原理 〜身近な例3選〜

2025/1/16
2025/1/16

今回は、「鳩の巣原理」について紹介します。


鳩の巣原理

n>kmn>km の時、 nn 個のものを mm グループに分けると、あるグループには必ず k+1k+1 個以上属する。(ただし、 n,k,mn,k,m は自然数 )

数学的に書くとややこしいですが、感覚的には、とても 当たり前 です。 例えば、10人を3つのグループにわけると、どれかのグループは4人以上になりますよね。それだけです。

しかし、ここから面白いことが言えるんですね。


例1:サッカーのスタメンで、背番号の下一桁が同じ選手が必ず1組いる

問題

サッカーのあるチームのスタメンで、背番号の下一桁が同じ選手が必ず1組いることを示せ。

ここでは、「スタメンを背番号の下一桁に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。

スタメンは全部で 11 人います。一方で、背番号の下一桁は 0~9 の 10 通りです。 なので、必ず 1 組は下一桁が同じ選手がいるというわけですね。例えば、以下の表のようになりますね。

スタメン小川鎌田南野三苫守田遠藤堂安町田板倉橋岡鈴木
背番号191587561016431

数式で書くと、以下のようになります。

n=11, m=10, k=1n=11,~m = 10,~k = 1 とすると、 n>kmn > km なので、 11 人のスタメンの中に背番号の下一桁が同じ選手が 1 組以上存在する。

この例は直感的にも分かりやすいのではないでしょうか。次から徐々に難しくなってきますが、その分意外なことが導けます。


例2:世の中には、髪の毛の本数が全く同じ人が4万人以上もいる!?

問題

世の中には、髪の毛の本数が全く同じ人が4万人以上いることを示せ。

ここでは、「人を髪の毛の本数に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。

髪の毛の本数ってどのくらいでしょうか。調べたところによると、日本人は 10万本が平均で、欧米人だと 15万本くらいみたいです。そこで、全人類の髪の毛の本数は 20万本以下 であると仮定しましょう。 つまりグループ数は 20万個以下、m200,000m \le 200,000 です。

一方、全人類の数は2025年現在で 80億人以上 いるみたいです。つまり、 n>8,000,000,000n > 8,000,000,000 です。(明らかに80億人ぴったりではないのでイコールは外します)

すると、 k=40,000k=40,000 として、 n>kmn > km が言えます。ここから、ある髪の毛の本数を持つ人が 4万人以上 いることが言えました。( 40,001 人以上とも言える)

数学的に書くと小難しいですが、イメージとしては図の通りです。あり得る髪の毛の本数よりも人口の方が圧倒的に多いから、このようなことが起きるんですね。 髪の毛0本の人だけで 100 万人以上いる気もしますが……。

髪の毛の本数0本1本2本……145,134本145,135本……200,000本---
人数3,810人1人0人……43,123人38,789人……0人計 8,000,000,000人

例3:全く同じ時刻に生まれた赤ちゃんは存在するか?

問題

秒数まで同じ時刻に生まれた赤ちゃんは存在するかを求めよ。

秒数まで同じ時刻ということは、〇年〇月〇日〇時〇分〇秒まで同じということですね。そんな赤ちゃんは存在するのでしょうか。

ここでは、「赤ちゃんを生まれた時刻に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。

まず、秒数について。あり得る秒数は、例えば 2024年に限定してみると、 366×24時間×60×60=31,622,400通り366\text{日} \times 24\text{時間} \times 60\text{分} \times 60\text{秒} = 31,622,400\text{通り} となります。
つまりグループ数は 31,622,400通り、 m=31,622,400m = 31,622,400 ですね。

続いて、生まれた赤ちゃんの人数を調べてみましょう。詳細な資料は見つかりませんでしたが、 過去データなどから、1年あたり 1億人 はいそうです。よって、 n>100,000,000n > 100,000,000 となります。
ここから、 k=3k = 3 として、 n>kmn > km が言えます。

よって、 全く同じ時刻に生まれた赤ちゃんは、存在するどころか、4人以上いる ことがわかりました。

一生会えないだろうけど、お幸せに。