今回は、「鳩の巣原理」について紹介します。
鳩の巣原理
の時、 個のものを グループに分けると、あるグループには必ず 個以上属する。(ただし、 は自然数 )
数学的に書くとややこしいですが、感覚的には、とても 当たり前 です。 例えば、10人を3つのグループにわけると、どれかのグループは4人以上になりますよね。それだけです。
しかし、ここから面白いことが言えるんですね。
例1:サッカーのスタメンで、背番号の下一桁が同じ選手が必ず1組いる
問題
サッカーのあるチームのスタメンで、背番号の下一桁が同じ選手が必ず1組いることを示せ。
ここでは、「スタメンを背番号の下一桁に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。
スタメンは全部で 11 人います。一方で、背番号の下一桁は 0~9 の 10 通りです。 なので、必ず 1 組は下一桁が同じ選手がいるというわけですね。例えば、以下の表のようになりますね。
スタメン | 小川 | 鎌田 | 南野 | 三苫 | 守田 | 遠藤 | 堂安 | 町田 | 板倉 | 橋岡 | 鈴木 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
背番号 | 19 | 15 | 8 | 7 | 5 | 6 | 10 | 16 | 4 | 3 | 1 |
数式で書くと、以下のようになります。
とすると、 なので、 11 人のスタメンの中に背番号の下一桁が同じ選手が 1 組以上存在する。
この例は直感的にも分かりやすいのではないでしょうか。次から徐々に難しくなってきますが、その分意外なことが導けます。
例2:世の中には、髪の毛の本数が全く同じ人が4万人以上もいる!?
問題
世の中には、髪の毛の本数が全く同じ人が4万人以上いることを示せ。
ここでは、「人を髪の毛の本数に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。
髪の毛の本数ってどのくらいでしょうか。調べたところによると、日本人は 10万本が平均で、欧米人だと 15万本くらいみたいです。そこで、全人類の髪の毛の本数は 20万本以下 であると仮定しましょう。 つまりグループ数は 20万個以下、 です。
一方、全人類の数は2025年現在で 80億人以上 いるみたいです。つまり、 です。(明らかに80億人ぴったりではないのでイコールは外します)
すると、 として、 が言えます。ここから、ある髪の毛の本数を持つ人が 4万人以上 いることが言えました。( 40,001 人以上とも言える)
数学的に書くと小難しいですが、イメージとしては図の通りです。あり得る髪の毛の本数よりも人口の方が圧倒的に多いから、このようなことが起きるんですね。 髪の毛0本の人だけで 100 万人以上いる気もしますが……。
髪の毛の本数 | 0本 | 1本 | 2本 | …… | 145,134本 | 145,135本 | …… | 200,000本 | --- |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
人数 | 3,810人 | 1人 | 0人 | …… | 43,123人 | 38,789人 | …… | 0人 | 計 8,000,000,000人 |
例3:全く同じ時刻に生まれた赤ちゃんは存在するか?
問題
秒数まで同じ時刻に生まれた赤ちゃんは存在するかを求めよ。
秒数まで同じ時刻ということは、〇年〇月〇日〇時〇分〇秒まで同じということですね。そんな赤ちゃんは存在するのでしょうか。
ここでは、「赤ちゃんを生まれた時刻に応じてグループ分け」 すれば良さそうです。
まず、秒数について。あり得る秒数は、例えば 2024年に限定してみると、
となります。
つまりグループ数は 31,622,400通り、 ですね。
続いて、生まれた赤ちゃんの人数を調べてみましょう。詳細な資料は見つかりませんでしたが、
過去データなどから、1年あたり 1億人 はいそうです。よって、 となります。
ここから、 として、 が言えます。
よって、 全く同じ時刻に生まれた赤ちゃんは、存在するどころか、4人以上いる ことがわかりました。
一生会えないだろうけど、お幸せに。